top of page

 

【 負帰還(ネガティブフィードバック):その2 】

みなさん、こんにちは!

蒸し暑いですね・・・。

さてさて、前回に引き続きまたまた負帰還(ネガティブフィードバック)のお話です。

負帰還と言いましても実はいろんな形式があるんです。

基本的に、出力信号を入力に戻して、そこで元々の入力信号からその戻した信号をさっ引くんですが、

この戻し方、さっ引き方にいろんな形式があるんですよ。

以下にそれを説明しましょう。

まずは出力の電圧を電圧として戻す方法、電圧電圧帰還(直列並列帰還)、そして出力電圧を電流として戻す

電圧電流帰還(並列並列帰還)、出力電流を電圧として戻す電流電圧帰還(直列直列帰還)、出力電流を電流として戻す電流電流帰還(並列直列帰還)、以上の形式があるんです。

それぞれ電気的特性に違いが出て来るのですが、前回お話しした、ほとんどのオーバードライブに使われているオペアンプを使った回路は電圧電圧帰還になります。

ここで図を見てください。

表があると思いますが,この電圧電圧帰還、入力のインピーダンスが高くなって、出力のインピーダンスが

低くなるんです。

どういうことかといいますと、使うギターがどんなギターでもその影響がなくなり、使うアンプがどんな

アンプでもその影響がなくなるという理想型に近づくんですよね。

どんなイクイップメントを使っても、ちゃんとペダルの音が出るという・・・。

そしてもう一つ、同じく図の左下を見てください。

これ、あのファズフェイスの簡易回路です。

この回路も帰還アンプになってますね。

2段目(右側)のトランジスタから抵抗を介して1段目(左側)のトランジスタの入力に信号が戻されてます。

これは出力電流を、これまた電流として入力に戻す電流電流帰還というヤツなんですよ。

この電流電流帰還ですが,同じく表をみて頂くと,入力インピーダンス、出力インピーダンスとも高く

なるんです・・・。

??!

なんで?!

これじゃあ使うギターにめっちゃ影響を受けやすくなって、使うアンプにも影響を受けやすくなってしまうではないか!!

なんでこんな形式の回路を使ってるの??

はい、分りません。

なんでこんな回路使ってるんでしょ?!!

しかしこれがファズとしては良いのかも知れませんね。

なんだか暴れまくり、みたいな感じになりそうですので!

今回はちょっと短めですが、こんなところでー。

次回,乞うご期待!

 負帰還 その3 

 

【 負帰還(ネガティブフィードバック):その3 】

 みなさん、こんにちは!

さて、負帰還:その3まで来ました。

今回は回路設計者が忌み嫌う発振について簡単にお話ししてみたいと思います。負帰還アンプにこの発振と言う嫌〜な現象はつきものなんですよね・・・。

発振と言いますと、例えばアンプからピ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!というケタタましい音がなったり、

あとはいわゆるギターをアンプに近づけヒ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!と鳴らすフィードバックのような現象のことを言います。

マイクがハウるのもまあそうですね、発振の一種でしょうね。

今まで説明して来た負帰還の簡易的な図をもう一度添付の絵に描いておきます。

左上に【 正常 】と書かれた図が、ちゃんと負帰還が掛かって、その効果を発揮している状態です。

一方、その下の【 発振 】と書かれた図が異常な状態を表しており,アンプからピ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っという音が出ている状態です。

発振って一体ナニが起こっているのか??

【 発振 】の図を見てください。

出力Voがβの箱を通ってβVoとなって入力に戻ってますよね?

これは【 正常 】と同じです。

でも、なにか気づきませんか??

そうなんです、上の【 正常 】の同じ場所の波形(ピンク色、βVo)と比べて、【 発振 】のほうはと言うと波形(同じくピンク色、βVo)の上下が反転してますよね?

これ、負帰還ではなく、正帰還になってしまっているんです!

どういうことかと言いますと、負帰還は入力信号VinからβVo信号をさっ引くのですが,【 発振 】のほうはと言いますと、上記のように波形が反転してますので、βVoをさっ引くのではなく,足してしまうことになってるんです。

この場合,アンプ:Aの入力であるVeが大きくなってしまっており、それをA倍するのでVoがさらに大きく

なる、そしてそのさらに大きくなったVoがβの箱を通ってまた入力に足されるので、またまたVeが大きくなる・・・・を繰り返し、結局無限大のようなゲインのアンプになるんです!!

こうなってしまったらちょとしたノイズが入力されても出力Voが無限大になるきっかけになりますので、ギターを弾かなくても

ヒュイ〜〜〜〜〜〜ンと嫌な音が出るんですね。

これがいわゆる正帰還という現象で、発振してしまう理由なんです。

以上を考えますと,発振の諸悪の根源はβVoの上下が反転すること、ひいてはVoの上下が反転してしまうことが原因だと言えます。

そしてこのVoが反転するのはアンプ:Aですでにそうなっているということなんですね。

アンプ:Aにその入力であるVeが入ると、通常はVeの波形の上下関係はそのまま出て来て欲しいのですが、

発振する時はその上下関係が反転してしまってるんです。

この反転の様子を表したのが右下の【 位相遅れ(回り)】の図です。

βVoを表したピンク色の波形が、上から下に行くにつれて左に遅れて行き、ついには反転していることが分ると

思います。

3段あるβVoの波形の一番下がちょうど上下反転した状態で,これが入力Vinに足されてしまう,ということなんです。

ではなぜ、このような上下反転(位相遅れ、位相回り)が起こるのでしょうか?

実は,アンプ:Aは、左の一番下のようなゲインの周波数特性になっているんですね(青いラインです)。

縦軸がアンプのゲインで横軸が周波数です。

この青いラインにp1,p2と書かれているのが分ると思います。

また、そのp1,p2のところでゲインがカクンっと落ちている様子が書かれていると思います。

このカクンっが起こるp1,p2を極(きょく、Pole)と言って、この周波数でゲインがカクンっとなり(落ち)、さらに位相が回ってしまうのです!(電気の理論として)

極一つで位相が90°回るので、p1,p2の2個で180°回る、つまり上下反転してしまうのです!(360°は一周回って元通りですので、180°は反転です)

 ※全てのアンプがp1,p2という2個の極を持っている訳ではありません。3つの場合もありますし、

極が存在する周波数もまちまちです。また、この極は回路上で抵抗成分とコンデンサ成分が両方存在する

箇所に出来てしまいます。

さて困った・・・。

このアンプ:A(オペアンプに相当)が上記のように極を2個持っていたら、必ず発振してしまうでは

ないか・・・(正確にはアンプゲインAと帰還率βの掛け算であるループゲインAβ)。

しかし、先人たちは偉いですね〜、これを回避する方法を編み出した!

オペアンプ内部のとある箇所、例えば2段目増幅段の入出力間にコンデンサを繋げば、同じく周波数特性の図の緑のラインの特性にすることが出来るんです!

これを位相補償(Pole Splitting)と言います。

 ※2016,9/15修正、オペアンプの出力〜マイナス入力にコンデンサを繋ぐ位相補償はちょっと違う原理でした

緑のラインを見て頂きますと、p1がp1'となって低い周波数に移動しており,p2はp2'として高い周波数の

移動しています。

このように位相補償は極であるp1,p2を引き離すことが出来るんですね。

そうすると、相変わらずp1'はありますが、p2'がゲインゼロ以下に移動してますよね?

確かにこのように極を移動させても、p1',p2'のところで位相が回る(遅れる)ことに変わりありません。

しかし!

p2'がゲインゼロ以下にあるので、この状態で位相が180°回っても発振しないという理論があるんです。

要は、信号の位相が180°回ってしまう場所をゲインゼロ以下のところに移動させましょう、そうすれば

発振しませんよ、ということなんですね。

これを位相補償といい、アンプを発振から救う技なんです。

世の中のギターアンプでもオーバードライブでも、必ずと言っていいほどこの位相補償が施されています。

負帰還ある所に位相補償あり!

こうやって楽器がちゃんと使えるようになってるんですね〜。

さて、みなさん。

今回はちょっと難しかったでしょうか?

まあ回路設計者でもきちっとこの現象を説明出来ない人もいるかもですので、やはり難しいトピックス

なんですね。

以上,みなさんが普段何気なく使ってるアンプはこれほど苦労して作られているということが伝わったで

しょうか?

逆に言いますと、こういうことをきちっと理解していないときちっとしたアンプ作り、エフェクター作りは

出来ないということですね!

bottom of page