
負帰還 その1
【 負帰還(ネガティブフィードバック): その1 】
みなさん、こんにちは〜。
さてさて、今回の技術講座は負帰還についてです。
負帰還ってなんじゃ??ですよね・・・。
ここで絵を見てください。
左上側に回路図がありますよね。
これはオーバードライブやディストーションにほぼ100%使われていると言っても良いくらいの増幅回路です。
三角のシンボルはオペアンプ。
その出力(三角の右端の頂点)から抵抗Rg、R2を介してオペアンプの” −(マイナス)入力”に接続されていますよね。
マイナス入力に出力から信号が戻されている形になっているから、この回路形式を負帰還というんです。
そしてその回路の下の図を見てください。
これは上のオペアンプによる負帰還をシンプルに書いた図なんです。
”A”と書かれた四角い箱がオペアンプを示していて,そのAが増幅度(ゲイン)を示しています。
そしてそのオペアンプを示す四角の箱の出力Voがβという箱を通って入力Vinに戻り、そこで引き算がなされています(引き算の結果がVeです)。
このβが上側の図の抵抗Rg、R2、R1、C1を表しているんです。
このシンプルな箱の回路図に従って式を立ててゴソゴソっとその式を解いて行くとこの負帰還アンプのゲインが出て来ました!
そうなんです、この負帰還を掛けた増幅器のゲインは1/βとなるんですね。
そしてこのβは抵抗とコンデンサだけで決まる要素ですので、なんと、オペアンプ(のゲイン:A)がどこかに行っちゃいました!
そうなんです、この負帰還を使うとオペアンプが見かけ上、関係なくなって、抵抗など受動部品だけでゲインが決まるようになるんです。
そうなると、オペアンプの特性のバラツキが見えなくなりますので,非常に安定したゲインが作れるんです。
そして、負帰還という技術を使うと周波数特性が伸びたり,ノイズが小さくなったり、そういう効果があるんですね。
なので、オーディオアンプなどは100%この負帰還技術が使われているんです。
しかし、良いことばかりではありません・・・。
実はオペアンプの性能によっては発振してしまうのがこの負帰還の常(つね)ですので、いかに発振させないかが難しいんですね。
(回路設計社はずっとこの問題に悩まされる・・・)
では実際に負帰還を使った増幅器のゲインを計算してみましょう。
βの式には絵の右上の式になりますので、その抵抗値を実際に代入してみます。
オーバードライブやディストーションのゲインのツマミがRg:可変抵抗(0〜1MΩ)です。
そしてR2は4.7kΩとしましょう。
R1はとりあえず2kΩとしましょうか。
そしてコンデンサC1が示す抵抗値Zc1は、周波数によって変わるのですが(ギター信号の周波数が低いと抵抗値が高くなり、周波数が高いと抵抗値が小さくなる)、ここではギター信号を500Hzの中音域とし、コンデンサの容量値を0.22uFとすると約1.5kΩとなります。
これらの数値を代入して1/β(βの逆数)とすると、ゲインが145倍となります!
さてここで、オーバードライブし始める、つまり歪み始める時のギター信号の大きさ(振幅)を求めてみましょう。
ゲインはちょうど半分に設定するとしましょうか(Rgは500kΩになります)。
オペアンプ回路は9Vの電圧で動いており、オペアンプによる増幅器は4.5V(9Vの半分)を中心にギターの信号を取り扱っています。
なので、出力信号が4.5Vに増幅されるとちょうど電源電圧の9Vに達しますので,それ以上大きくなるとギター信号が電源電圧にぶつかって歪み始めます。
この時のギター信号は約60mVp-pです。
ハムバッキングの最大出力が1Vp-p以上ですので、かなり小さいギター信号でも歪んじゃうということですね。
この設定でガ〜ンとギターを弾くと強烈に歪みそうだということが分りますね!
というように、オーバードライブ、ディストーションの増幅回路のゲインは決まっているんです。
上の例ではギターの信号を500Hzとして計算しましたが、6弦などの周波数はもっと低い(80〜100Hz)ですので、コンデンサC1の示す抵抗値Zc1がもっと大きくなります。
このとき,ゲインが小さくなりますので、低音が出ないことになります。
低音が出ずスッキリした音にしたければこのコンデンサC1の容量値を小さくします。
逆に低音からガツンと歪ませたい場合はコンデンサC1の容量値を大きくすればOKです。
世の中のいろんなオーバードライブ、ディストーションは、このC1だけでなく、ほかの抵抗の値などを微妙に変えて音造りをしてるんですよね。
ということで、負帰還の第1弾はこんなところでー!
第2弾、乞うご期待!!