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 電源電圧で音が変わるのか? 

 

 

【 電源電圧で音が変わるのか? 】

 みなさん、こんにちは!

Fats Sound Laboratoryの厚木ファッツです。

今回は電源電圧でエフェクターの音が変わるのか?について考えてみたいと思います!

よく、エフェクターに与える電源電圧を9Vから18Vにすると音が良くなる、とか言いますよね?

それって本当なのでしょうか?

変わるとしたらどういうメカニズムで変わるのか?

それを考察してみたいと思います。

ネットや雑誌では電源電圧を高くすると音にハリが出るとかよく書いてますよね?

僕は、もし音が変わるのであればある程度の理由づけは必要だと思うんですね。

それをスルーして音が変わると言われても納得がいきません・・。

また、僕が以前9Vと13Vの音の変化について実験してみたのですが、音が変わるという感じは全くなかったんです・・・。

その辺を踏まえて考察してみたいと思います!

まず最初に申し上げておきますが、この考察ではちゃんとした結論は出しておりません。

音が変わる可能性について考えたのみで、定量的な実験はしておりません。

あくまでも思考実験だけですので、いずれはちゃんと実験をし、音も実際に公開したいとは思ってますが・・。

また今回の考察対象はオーバードライブです。

まず、オーバードライブの回路、システムを確認しておきましょう。

僕が調べた範囲では、世の中のオーバードライブは上側の図のような構成がほとんどでした。

ギターの信号は左の”IN”から入ってきて、右側の”OUT”から出ていきます。

まずは最初の増幅回路部でギターの信号をガツっと増幅します。

そしてその増幅回路にはダイオードがついており、増幅したギター信号を±0.7Vでクリップします。

図のようにギター信号の上下が潰れた形になりますので、それが歪みの音になるわけですね。

そのあと、その歪んだギター信号はトーン回路に入っていき、そこでトーンが調整されます。

このトーン回路はシンプルなタイプ:ローパスフィルタとチューブスクリーマーのようにオペアンプを使ったトレブルブースターのような形式があります。

(ファッツドライブのような独自の形式もあり、様々ですが)

トーン回路でシェーピングされたギター信号は最後にバッファに入って、エフェクターから出力されます。

このバッファにはエミッタフォロワやオペアンプを使ったボルテージフォロワがあります。

さて、オーバードライブを構成する上記の回路ブロックで電源電圧が影響する箇所はどこでしょうか?

オペアンプは影響されそうですよね。

実はコンデンサも印加電圧でその容量値が倍半分も変化するものがあるのですが、そういうコンデンサを使わなければ電源電圧の影響がないので、それは考えないことにしましょう。

ではオペアンプの何が電源電圧に影響を受けるのでしょうか??

それを考えると答えが見えてきそうですね。

そこで下側の図を見てください。

これはJRCさんのオペアンプ4558のデータシートの一部で、オペアンプの電気的特性がどういうものかが書かれている、まあオペアンプの取説みたいなもんです。

ちょっと字が小さくて申し訳ないのですが、そこには入力バイアス電流とか最大出力振幅とか、消費電流、スルーレートなどが書かれてあります。

それらが電源電圧で大きく変われば、オーバードライブの音も変わりそうですね。

その前に、まず増幅回路の出力の±0.7Vはどうか、を考えておきましょう。

はい、これは電源電圧に関係ないダイオードで決まる部分ですので、変わりません!

もし増幅回路の形式としてダイオードがついておらず、電源電圧までギター信号を増幅し、電源電圧にその信号をぶつけることで歪みを得るタイプ(ファッツドライブがそうです)なら、電源電圧を上げることで歪みにくくなることから、影響はありそうです。

しかし、ダイオードで±0.7Vにクリップするという動作は電源電圧に関係しません!

電源電圧を例えば9Vから18Vにしても影響がないんですね。

いきなり身も蓋もない話からしてしまいましたが、まあ一応はオペアンプの特性が電源電圧に関係するのかを見ていきましょう。

まず一番気になるのは消費電流なんです。

もし電源電圧を上げることで消費電流が大きく増えたなら、いろんな特性が変わってくるんですよ。

例えば、音が速いとかに関係してくるスルーレート(決まった時間で出力電圧がどれだけ上下に変化できるかを表す特性項目)も速くなりますので、音のエッジが際立つ可能性はあります。

しかし、世の中のオーバードライブに使われているいろんなオペアンプのデータシートを調べた結果、電源電圧で消費電流やスルーレートはほとんど変わらないことがわかりました(オペアンプとして優秀です)。

もし、電源電圧によってオペアンプの特性がある程度変わったとしても、増幅回路部の出力がダイオードによって±0.7Vにクリップ(制限)されてますので、そういう狭い範囲では影響は見えにくいとも思われます。

電源電圧が9V〜18Vという広さに対して歪んだギター信号は0.7Vですので、すごく狭い範囲の話だとわかりますよね。

ということは、チューブスクリーマータイプのトーン回路もオペアンプを使ったボルテージフォロワもその特性はほとんど変わらないと想像できます。

このように、電気的に考察すると電源電圧でオーバードライブの音が変わるとは考えにくいんです・・・。

確かに、電源電圧を大きくしてその範囲で歪み信号を増幅し、出力するときにギター信号を小さくすればノイズをある程度は圧縮できるかもですが・・。

でもそれはあくまでもノイズの話ですので、ギター信号そのものとはまた違いますよね。

僕が以前やった9Vと13Vでの実験では、音の変化はわかりませんでしたし、それを考えても、電源電圧による音の変化は分かりづらいのではないかなあと思います。

いずれちゃんと実験をしてみたいと思いますが、オーバードライブに使われている部品には耐圧があり、高い電圧を印加すると壊れるものもありますので、ちょっと怖いですね〜。

ということで、今回の電源電圧でオーバードライブの音が変わるか(ハリが出るか、コシが出るか)についての考察の結果は、ほとんど変わらないのでは?という結論に至りました。

 

 

 

 

 

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