
バッファってなんじゃ その4
【 バッファってなんじゃ?:その4(最終回) 】
みなさん、こんにちは!
長らく書いて来ましたバッファについてですが、今回が最終回です!
もう一息、頑張って行きましょう〜。
さて、前回までのお話は、長〜いシールドを使った場合、そのシールドがコンデンサ成分を持っているため
ギターの音がハイ落ちしてしまう、これを防ぐためにギター信号をショボらせることなくそのコンデンサ成分
に元気に電流を流す役目を果たすのがバッファだ、というお話でした。
そして、その説明の中で、なぜシールドのコンデンサ成分に電流を流すと高音信号がショボってしまうのか?
を細かい回路動作で説明しましたが、これがちょっとヤヤこしかったでしょうか・・(下にもっと簡単に
解るような別の説明もあります!)。
そして前回の最後に、出力部のローインピーダンスの意味、メカニズムを説明しました。
インピーダンス=直流・交流含めた抵抗性分なのですが、このインピーダンスが低いと言うことは、出力部に
おいて電流を出し入れしてもそこの電圧(ギター信号)が影響を受けない、変動しないということを意味する、
ということもお話ししました。
(オームの法則:E=IRに照らし合わせると、電流Iが大きくてもインピーダンスRが小さければ電圧である
ギター信号Eの変化は小さい)
さて、今回は最終回ですが,そのローインピーダンスのもう一つのご利益,バッファのもう一つのご利益を
お話ししましょう。
実はこのお話は前回までと同じ内容だと言っても良いんです!
(以下,図にありますように、ギターアンプをAmpと表記します。エフェクター内のアンプ回路と区別する
ためです)
まず、バッファのもう一つのご利益を言ってしまいますと,入力インピーダンスの低いAmpに
ハイインピーダンス出力のギターやエフェクターを繋ぐとギター信号が大きく減衰してしまう、最悪は
歪んでしまう、しかしバッファがあればそれを防ぐことが出来る!です。
今では入力インピーダンスが極端に低い(つまりローインピーダンス)Ampとかってあまりないとは
思いますが,AmpのLo入力などは100kΩ程度ですよね(Hi入力は1MΩなど高いインピーダンス)。
で、エフェクター(オーバードライブなど)の出力って実は100kΩ程度になっているモノもたくさんあります
ので、エフェクターの出力インピーダンスとAmpの入力インピーダンスがほぼ同じ,という状況はざらに
あります。
では、Ampなど、ギターやエフェクターに対して受け側となるモノの入力インピーダンスが低いと
どうなるのか?
ここで図を見てください。
上側の絵は以前も書きました、バッファのないアンプの出力部が直接シールド〜Ampに繋がれている場合です。(バッファのないアンプの出力インピーダンスは高い)。
この場合,シールドのコンデンサ成分によってギター信号がショボってしまうというお話をしました。
そのシールドのコンデンサ成分を今回は点線の絵で描いています。
そして今回はAmpの入力部にその入力インピーダンスである抵抗も書いています(Zinとします)。
ここで、そのコンデンサ(点線)をずずずっとそのまま右側にずらして、Ampの中に入れてしまいましょう。
すると、Ampの入力インピーダンス(抵抗)と同じ位置に来ますよね?
そうなんです、シールドのコンデンサ成分もAmpの入力インピーダンスも立場的には同じなんですよ!!
何が違うかと言いますと,コンデンサは高い周波数の信号、つまりギター信号のハイ成分に対してのみ低い
抵抗値に見えるもので、抵抗は低い周波数から高い周波数までの全てのギター信号に対して純粋に抵抗として
働くんです。
ということで、影響の出る周波数は違えどもシールドのコンデンサ成分もAmpの入力インピーダンスである
抵抗も同じものなんですね。
あ!!
そうですね、お察しの通り,シールドのコンデンサ成分がギター信号をショボらせるのであればAmpの
入力インピーダンス(抵抗)も同じくショボらせるのです!(抵抗分圧というやつです)
それも、コンデンサより質が悪く,ギター信号の全ての周波数に対してショボらせるのです・・・。
そこで登場するのがまたまたバッファですよね。
バッファを使えば、シールドのコンデンサ成分を元気に駆動したように、Ampの入力インピーダンスも
楽々駆動してくれます。
バッファの出力インピーダンスがめちゃくちゃ低いために、少々低いAmpの入力インピーダンスなんて
屁でもない訳です。
ということで、バッファのご利益として、低い入力インピーダンスを持つAmpなどを使った場合でも、
ギター信号がショボることがないということが言えます。
ここで、ギター信号がショボってしまうことを簡単に表す式をご紹介しましょう。
図の下側の絵は前回も書いたバッファの等価回路です。
この絵はバッファだけでなく、アンプなど、何か出力信号があって、その出力部にインピーダンスを持つ回路に
対しては何にでも使える絵なんですね。
そしてその等価回路のすぐ上のピンク色で囲った式があると思いますが,この式の意味することは、
ギター信号Voはなにやら分数で表された味付けをされてVinとしてAmpに入力される、ということを
表しています。
そしてその味付け(関数と言います)の分数式の中にはバッファの出力抵抗RとAmpの入力インピーダンスZin
が入っています。
ここで、もしバッファの出力インピーダンスRがAmpの入力インピーダンスZinよりめちゃくちゃ小さいと
すると、R/Zinという項は1より小さくなり,さらにはゼロに近づきます。
すると、味付け分数全体としては1に近づきますので、ギター信号Vo=Amp入力Vinとなる、つまりギター信号
がショボることなくAmpに入力されるということを表しています。
逆に出力インピーダンスRがAmpの入力インピーダンスZinより大きい場合はR/Zinが1以上になりますので、
味付け分数としては1/2(=0.5)より小さくなります。
この場合,ギターの信号Voに0.5(以下)が掛け算されますので,信号が半分以下にショボってしまうんです!
というふうに、この分圧の式で考えると出力インピーダンスと入力インピーダンスの大小によるギター信号の
変動が解りやすいですよね。
最初からそれ出さんかい!!って怒られそうですが,これを言ってしまうと数式だけイジって、物理的意味を
すっ飛ばすことになりますので敢えて出しませんでした。
(とは言っても、分圧の式も物理的意味をちゃんと持ってます)
※電力を最大限に伝送したい場合、インピーダンスマッチングという考え方があります。
(高周波の場合は反射の問題もありますので)
しかしエレキギターの場合は、アンプの入力までは電圧をきちっと伝えれば問題ないと思います。
その場合はロー出しハイ受けで十分だと思います。
(周波数が低く、反射も問題にならないため)
さて、長かったバッファのお話もこれで終わりです。
普段、なにげにバッファ、バッファと言ってもこういう物理的な動作、現象を具現化している、とっても
偉いモノなんですね!
このバッファの設計もけっこう難しいんですよ〜。
ご紹介したエミッタフォロワなんか設計や作り込みを誤ると発振しちゃいますし!!(ピ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!)
以上,長らくお読み頂きまして、ありがとうございました!
また何かネタがあったら書きますので、その時はよろしくお願いします〜。
※上に書きました、出力インピーダンスの高いギターやアンプなどバッファがない場合はギター信号がショボる
ということですが、専門的に言いますと、これはシールドやAmpの入力インピーダンスがエフェクター(内の
アンプ)の負荷となり、設計したゲイン(増幅率)が変わってしまう、と言います。
バッファはこの設計したゲインが変化しないようにエフェクターとシールド,Ampの間に挟み込む緩衝器の
役割を果たします。
また、ノイズに関しては今回はふれませんでしたが、バッファの出力がLoインピーダンスになることによって
電磁誘導によりノイズ電流が誘起されても、それがノイズ電圧としては非常に小さいものになるので、
その結果ノイズに強くなります。